金継ぎセットで作業し途中で止まってしまった器

金継ぎが流行っているせいか初歩段階で失敗するケースが多い

市販のセットはどうしても販売目的に作られていますので、きれいに直すには素材の量、道具が足りません。そのため初めての方がそれを使いきれいに直すのは不可能だと思います。漆の扱い、塗り厚は説明書を見ても難しいかと思います。セット購入後金継ぎをされて失敗した器もよく依頼されます。金の量も少なく土物の表面が凹凸のある器でしたら割れた状態にもよりますが金が足りなくなります。手順書も同封されていますが、漆の厚みなど立体のイメージが付きにくく途中(作業の下地段階)で失敗する場合が多いようです。漆が垂れてそのまま固まるとすごく硬くなり取り除くのが大変です。

 


よくある失敗事例とその修正

手順書のとおりにしたのにうまくいかない  ①手順書で使われている器はおそらくツルツルとした磁器だと思います。説明書のまま表面がザラザラした器に作業した場合はみ出した漆がきれいに取れないです。

②漆の塗り厚の説明が少ない。ただ「塗りましょう」だけの説明では説明不足です。

金継ぎの出来栄えには漆の塗り厚が大事です。塗り厚をイメージさせる説明がないと失敗しやすいです

接着時にずれる  手順書に接着前に断面に漆を塗ると書いてありますが塗らなくていいです。塗ってしまいそのまま乾くとうまく接着できなくなります。断面に漆を塗り乾いてしまったらそのまま当工房に送ってください。修正方法 断面をルーターで削り漆を削り接着します。しかし完全に断面についた漆は取れないため少し太めの金継ぎになります。 

 

漆が垂れて固まった  欠けの金継ぎ修理でよくあります。欠けは錆漆という粘土状の漆で盛り上げます。液体の漆ではないので垂れる心配はないです。しかし、液体の漆だけで盛り上げようとすると乾くまでに垂れたり、しわが入った様に乾いてしまいます。 修正方法  磁器の器でしたらきれいに垂れた漆は取れますが、土物や素焼きのようなザラザラとした表面の器は完全に垂れた漆が取れず残る場合があります。残っtら部分も金継ぎ等の仕上げになります。

漆にかぶれてしまった。 これは失敗ではないです。私もかぶれます。金継ぎ作業中手などに漆が付いたらすぐに油で拭いてください。サラダ油、オリーブ油などで大丈夫です。その後アルコールなど含んだ除菌シート等で手を拭いてください。漆に対しては徐々に免疫がつきかぶれの程度も軽くなっていきます。特に失敗ではないのでかぶれが引いたら作業を始めてもいいと思います。

作業を止めて数年放置してある  金継ぎをあきらめ数年放置した状態のものですが普通に修理可能です。修理箇所はすごく硬くいなっています。接着してある器は特にはがさずそのまま接着された部分を使用します。 修正方法 ずれて入り部分は段差をルーターで削り滑らかにします。削るため太い金継ぎになります。欠けた部分は一度古い漆を取り除き始めからやり直します。

ボンドで付けてしまった  こちらもよくあります。器により剥がせる器と剥がせない器があります。

修正方法 土物で強力なエポキシ系などのボンドで付けた場合はそのまま利用します。磁器の場合はお湯で温めると多くのボンドは剥がれますので磁器の場合は剥がします。

途中の器の事例集

主に接着の工程で送られてきた器の写真です。修理前の様子と金継ぎの線の幅を見てください。

お値段途中の状態により剥がす工程の料金1500円ほどプラスされます。

金継ぎのお皿

金継ぎ 消し金仕上げ 9000円ほど

修理前の器は麦漆を使用して接着してあります。比較的丁寧に作業されていまして、引継ぎ後の作業も楽でした。接着部分はそのまま利用しました。土物の断面は凹凸が多いため無理にはがすときれいに接着できません。仕上げは消し金仕上げです。

 


割れた壺
割れた壺に金継ぎ

厚みのある器です。接着が強く剥がすことが不可能です。手で触ると段差がわかりますので出っ張り部分をルーターで削りました。削った部分はすべて金継ぎをします。そのためうまく接着できた場合と比べて仕上げの金の線が太くなります。


カップにこくそ漆
白いカップに金継ぎ

金継ぎ 消し金使用 9900円

金継ぎセットではコクソ漆という木の粉と麦漆を混ぜた漆を使うことが多いですが、その漆を使うと慣れていない場合きれいに仕上がりません。(私はコクソ漆を使いません)理由は木の粉が粗く滑らかにつけることができないためです。幸い子の器は表面に釉薬がついていたためはみ出した漆はきれいに取れましたが釉薬が付いていないザラザラした器ははみ出した漆がそのまま残ります。


壺の修理
壺の金継ぎ

ボンドで接着しありおそらく数年経っていると思います。接着工程で付ける順番を間違えて空洞になっている部分が入らなかったか、欠片がなくなったかどちらかだと思います。壺は磁器ですのでお湯で温め慎重にボンドを剥がしました。欠片のない部分は漆で成形しました。


金継ぎセット
金継ぎセット失敗

金継ぎセットを購入後説明書に断面に生漆を塗りましょうと書かれている場合があります。特に磁器の場合は塗らないほうがいいです。写真は塗る量を間違えた結果下に漆が垂れて乾きました。磁器でしたら修正が出来ますが、焼き締めの器は修正がしにくいです。